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マシュー・バーニー 『クレマスター3』(2002)

 

米国の美術家、マシュー・バーニー。伝説的フィルム作品『クレマスター』シリーズ5部作の中で、唯一 前半と後半の二部に渡る超大作

CREMASTER3, 2002

Photo Chris Winget,

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels

マシュー・バーニー『クレマスター』シリーズ5部作で最も高い所が登場。ニューヨークの名所、クライスラー・ビルディング、グッゲンハイム美術館を昇降するシリーズ最終作

『クレマスター3』

2002年/アメリカ/カラー/35mm/182分00秒・途中15分の休憩(前半:1時間32分02秒+後半:1時間28分58秒)/1:1.66/ドルビーSRD

 

【スタッフ】

脚本・監督:マシュー・バーニー

制作:  バーバラ・グラッドストーン、マシュー・バーニー

撮影:  ピーター・ストライトマン

音楽:  ジョナサン・べプラー

衣装:  リンダ・ラベル

CG : アダム・マルティネス

 

視覚効果:マシュー・ウォーリン

メイク :レジーナ・ハリス

照明・スチール:クリス・ウィジェット

特殊メイク・効果:ゲイブ・バルタロス(アトランティック・ウエスト・エフェクト)

化粧品提供:M・A・C(ニューヨークのみ)

【キャスト】

フィンガル:ザ・マイティ・ビグス

フィオン・マッカンヘイル:ピーター・ドナルド・バダラメンティ

ゲイリー・ギルモア:ネスリン・カラノウ

見習い職人:マシュー・バーニー

ヒラム・アビフ:リチャード・セラ

未熟な新参者&オウナフ・マッカムヘイル:エーミー・マランス

「クラウドクラブ」給仕長:ポール・ブレイディ

「クラウドクラブ」バーテンダー:テリー・ギレスピー

グランド・マスターズ:マイク・ボチェッティ、デビッド・エドワード・キャンベル、ジェームス・パントリオン、ジム・トゥーイー

車両:1930年代型クライスラー・インペリアル・ニューヨーカー(1台)、1967年型クライスラー・インペリアル(5台)

マシュー・バーニー『クレマスター3

【あらすじ】

ケルト神話の世界。

フィンガルの洞窟に住む巨人、フィンガルが海を渡ってきた。

ジャイアンツコーズウェイの巨人、フィオン・マッカンヘイルを訪ねるためだ。

 

場面一転。ニューヨーク・マンハッタン。

アールデコ調の装飾がまばゆいクライスラー・ビルでは、ロビーに女性のゾンビが運ばれてきた。

彼女は見かけを変えた男性の死刑囚、ゲイリー・ギルモアだった。

 

黒塗りの1930年代型クライスラー・インペリアル・ニューヨーカーにゾンビが乗せられると、それを1967年型クライスラー・インペリアル5台が囲んだ。

 

『クレマスター』各作のイメージカラーに塗られた5台の車。

それがクライスラー社の旧エンブレムにも似た五角形のフォーメーションを組み始め、一斉にゾンビを乗せた黒塗りの車を潰しにかかる。

 

その頃、見習い職人はクライスラー・ビルのエレベーターにいた。

与えられた仕事は、エレベーターの中をセメントで固めること。

しかし、エレベーターはセメントの重みでロビーまで落ちてしまう。

 

一方、見習い職人はシャフトを登り上階へ。

なんと「クラウドクラブ」に迷い込んでしまったのだ。

そこでは、フリーメイソンたちが黒ビール片手に秘密会議を開いていた。

 

「クラウドクラブ」のバーテンダーと滑稽なやりとりをする見習い職人。

いつの間にか、N.Y郊外のサラトガ・スプリングスに移動していた。

 

そこは名門競馬場。

何の因果か、ヒットマンに狙われるハメに…。

気づけば、今度は歯科の治療台で改造手術を受けていたのだ。

 

そこにヒラム・アビフが登場。

彼は建物の最上階に陣取り、クライスラー・ビル自体の設計をしていた。

見習い職人をいちべつすると、口内に黒い鉄片を押し込んだ。

 

その鉄片こそ、ロビーでボコボコにされた黒塗りの車だった。

ゾンビがエキスになるまで、小さく潰されていた。

 

突然、見習い職人の容姿が変貌。

フランク・ロイド・ライトが設計したN.Yのグッゲンハイム美術館に立つことになる。

 

美術館内をフリークライミングで縦横無尽に移動。

豊かな胸を揺らすコーラスガールや激しく対峙するロックバンド、義足の女性や厳つい彫刻家が待ち構えるフロアを行き来するのであった。

 

最後にケルト神話の世界に戻ると…。

 

『クレマスター』全作の引用を散りばめ、シリーズ全体を締めくくる3時間の超大作。

CREMASTER3, 2002

Photo Chris Winget,

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels

【リチャード・セラ(1938 - )】

米国の彫刻家。

マシュー・バーニーと同じく、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。

カリフォルニア大学バークレー校で学び、イェール大学では絵画を専攻。

作品が展示場所の一部となる「サイト・スペシフィックなアート(場の彫刻)」を数多く発表。

ニューヨークの連邦ビル前広場では、巨大な鉄板を弓形にそらせた作品「傾いた弧」(1981)を設置するも、危険で景観の邪魔との抗議が起こり、撤収されたこともある。

 

『クレマスター3』(2002)では、クライスラー・ビルディングの建築家であると同時にフリーメイソンの長であるヒラム・アビフ役を演じている。

【ポール・ブレイディ(1947 - )】

アイルランドのシンガー・ソング・ライター、ギタリスト。

1960年代から1970年代には、トラッド・バンド、ジョンストンズのメンバーで活躍。伝統音楽の革新を推し進めたバンド、ブランクシティのメンバーでもあった。

その後、プランクシティのアンディ・アーヴァインとコンビを組む一方、ソロとしての活動を増やしていった。

フィドル奏者のトミー・ピープルズ、ザ・チーフタンズのマット・モロイらとのセッションにも参加し、アイルランド音楽シーンに大きな貢献をした。

1980年代にロック・ミュージシャンに転向。名曲を数多く書いている。

 

『クレマスター3』(2002)では、クライスラー・ビルディング66階にあるバー、クラウド・クラブのマスター役を名演。

2002年マシュー・バーニー『クレマスター』フィルム・サイクルでは、東京会場となった渋谷・シネマライズに訪れた。

【ゲイリー・ギルモア(1940 - 1977)】

米国の死刑囚。

両親への反抗から、少年時代より傷害事件を起こし刑務所生活を送る。

父親から虐待を受け、母親は敬虔なモルモン教徒だった。

仮釈放中、母の故郷となるユタ州で殺人事件を起こす。

ガソリンスタンドとモーテルでモルモン教徒の青年2人を殺害し、死刑の判決がくだされている。

 

当時、アメリカでは10年近く死刑執行がなく、世論は死刑廃止へ向かっていたにもかかわらず、自ら銃殺を希望。

1977年ユタ州ドレイバー刑務所で銃殺刑に処せられた。

この事件を綴ったノーマン・メイラーの小説「死刑執行人の歌—殺人者ゲイリー・ギルモアの物語」(1979)は空前の大ヒットとなり、トミー・リー・ジョーンズ主演でテレビドラマ化されている。

実兄のマイケル・ギルモアが著した「心臓を貫かれて」(1994)は「ローリングストーン」誌に掲載。村上春樹が翻訳している。

 

【クライスラー・ビルディング】

ニューヨークのマンハッタン中心部に建つ高層ビル。

ウィリアム・ヴァン・アレン(1883 - 1954)の設計。

1930年に自動車メーカー、クライスラー社の本社ビルとして完成した。​

ステンレス鋼が白く輝く三角形を重ねた頂部の美観とともに、外壁面デザイン、ロビーのアールデコ調装飾の美しさが讃えられる名建築。

【N.Y グッゲンハイム美術館】

ニューヨークのマンハッタンで、セントラルパーク東に建つ白い外装の美術館。

フランク・ロイド・ライト(1867 - 1959)の設計。

1937年ソロモン・ロバート・グッゲンハイムが自分の美術コレクションを収蔵するために「非対象絵画美術館」を開設したのが前身。

1959年グッゲンハイム美術館の名のもとに、それを五番街に移して今に至る。

らせん構造のデザインは「ビッグスネイル(大きなカタツムリ)」との愛称で親しまれている。

【サラトガ・スプリングス 競馬場】

ニューヨーク州東部の高級避暑地、サラトガ・スプリングスにある競馬場。

小さな田舎町にあるが、アメリカ最古の競馬場とされている。

『クレマスター3』(2002)では、見習い職人を演じるマシュー・バーニーがゾンビ馬のレースを観戦。

死んだ馬が『クレマスター』各作のイメージカラーに飾られ、競争する設定だ。​

その後、見習い職人は秘密結社に追われ、場内で捕らえられてしまう。

【フィンガルの洞窟】

スコットランド西部のスタファ島にある洞窟。

スタファ島は「柱の島」とも呼ばれ、ストラスクライド州インナー・ヘブリディーズ諸島に位置する。

フィンガルの洞窟は、ワーズワースやキーツ、デニソンの詩にも読まれている。

メンデルスゾーンの演奏会用序曲「フィンガルの洞窟」(1830)でも知られ、日本のオーケストラに演奏されることも多い。

伝承によると、石を投げあう巨人族ふたりのうち、一方の名がフィンガルだったという。

北アイルランドのジャイアンツコーズウェイの延長という見立てもある。

ジャイアンツコーズウェイ

北アイルランド北部にある石柱が連なる地域。

アントリム州の北岸を約5kmにわる玄武岩の奇景。​

数千の六角柱が三段の台地に広がり、古くから観光名所となっている。

伝承では、同じような景色があるスコットランド西岸のスタファ島に行くために、巨人が建設したという。

そのため、地名には「巨人の土手道」という意味がある。

『クレマスター3』(2002)では、巨人のフィオン・マッカンヘイルが住み、石の柱を建てている。

画像出典:http://cremaster.net/

【「フィールド」エンブレム】

1987年「拘束のドローイング1」で初登場以来、マシュー・バーニーが頻繁に使用するシンボル。もちろん『クレマスター』シリーズでも多用。

楕円に長方形が重なる形で、楕円の部分が身体を表し、中央に重なる長方形が負荷を意味している。

『クレマスター1』あらすじは、こちら
『クレマスター2』あらすじは、こちら
『クレマスター4』あらすじは、こちら
『クレマスター5』あらすじは、こちら

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