マシュー・バーニー 『拘束のドローイング9』2005年 ロケ終了後 インタビュー(再録)

最終更新: 6月8日


DRAWING RESTRAINT 9 ©2005 Matthew Barney

Production Photo: Chris Winget, Courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels

再録:2017年10月23日

取材・文・構成:鈴木朋幸(トモ・スズキ・ジャパン 社長)

以下のインタビューは「ART iT」2005年 Summer/Fall号 pp.10-15に掲載した記事を一部改訂したものです。

鈴木朋幸:

子供の頃から、ずっとスポーツをしてましたよね。

だから、アートをやるにしても、ご自身の身体を駆使するのが自然な流れだった、と察します。

そこで「拘束のドローイング」シリーズですが、あれはスポーツとアート両面の要素を見せてますよね。とは言え、勝敗を競う運動競技とは違うし、単に平面作品を描く手段でもない。

あの表現の核は何でしょう?

マシュー・バーニー:

「拘束のドローイング」シリーズは、創造するための思考プロセスです。

あの中で提示してるのは、まず何かを表現したいという欲望。加えて、それを実際に創作するために必要な身体的トレーニングになります。ユニークなのは、その表現活動を邪魔するような動き、つまり抵抗みたいな力も同時に表している点です。

スポーツに例えるなら、絶対に競技場に立てないのに、延々とトレーニングを積むようなものでしょうか。

鈴木朋幸:

「拘束のドローイング」シリーズは、一度きりのパフォーマンスだけでなく、後から再生できる映像作品としても発表してますよね。

生身の体を使うがゆえに嘘がつけないパフォーマンスである一方、編集すれば動きが偽れる映像にも転化してきたわけです。

そんな相反する要素の折り合いは、どうつけましたか?

マシュー・バーニー:

「拘束のドローイング」シリーズの一部を発展させたのが『クレマスター』シリーズです。

確かに「拘束のドローイング1」や「拘束のドローイング2」は、事実の記録に近いビデオにもしています。やがて、自ら創造したキャラクターを編集してみたくなりました。そこに物語も加えてみたのです。

ゆっくりですが、体系的なプロセスをもって「拘束のドローイング」シリーズの中に、生のパフォーマンスと虚構のストーリーを交錯させるようにしました。

CREMASTER 3 © 2002 Matthew Barney

Photo Chris Winget, Courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels

鈴木朋幸:

『クレマスター』シリーズと言えば、あのフィルム5作品は、それぞれ特定のロケ地を選びましたよね。その場所が物語の一部として機能するようにも設計されています。

最新のフィルム作品『拘束のドローイング9』は、日本でロケしました。捕鯨や茶道という日本独自のモチーフも使っています。そうした日本に関するものは、どう作品に関わるのでしょう?

『クレマスター』全5部作のように、劇中の傍観者として日本という場所が機能しますか。

マシュー・バーニー:

いつか日本で作品を制作したいと思っていたところ、金沢21世紀美術館の長谷川祐子アーティスティック・ディレクター(当時)が、金沢での個展を提案してくれました。

専門的なことはわかりませんが、神道ではある事象はより大きな世界の一部とみなされ、人間は自然の一部と考えるようですね。そうした見方で自然を捉えるそうです。

まず、それを取っ掛かりにして、ストーリーを膨らませていきました。『クレマスター』シリーズの時みたいにね。

『クレマスター』の各作品では、取り巻く環境や建築物に人物が従属するような描き方をしています。つまり、外部環境が主役で人物が脇役です。

そうした外的な環境の役割を『拘束のドローイング9』で担うのが、捕鯨船の日新丸です。実は、ほとんどのシーンを日新丸で撮影しています。

鈴木朋幸:

最新のフィルム『拘束のドローイング9』は、2002年の『クレマスター3』と同様に、アートとエンタテインメントの狭間に位置するような印象を受けています。

また、捕鯨船の甲板シーンでは、楕円に長方形を重ねた巨大なワセリンの彫刻を登場させましたよね。あの形は『クレマスター3』でも起用したエンブレムじゃないですか。

『拘束のドローイング9』は、技術的にも内容的にも『クレマスター3』の延長線にあるものでしょうか?

マシュー・バーニー:

あの形は「フィールド」エンブレムと呼んでいます。

1987年の「拘束のドローイング1」で、初めて使ったものです。

あのエンブレムが意味することは「拘束のドローイング」シリーズ初期から変わりません。楕円が身体を表し、そこにかかる負荷が長方形です。人がクリエイティブな活動をする時、身体に負荷がかかる様子のシンボルなのです。

言わば、ハリー・フーディーニが大脱出のパフォーマンスをした際、あえて目隠しや手錠をして自分の肉体の限界を探ったようなものです。そんな意味合いが、あの「フィールド」エンブレムにはあるのです。

今回の『拘束のドローイング9』では、その「フィールド」を脱構築しています。もし身体にかかっていた負荷を取り除いたら、どうなるか?それを表現したかったのです。

思うに、何の抵抗もなくなれば、身体は官能的になり、エロチックとも言えるほどに昇天してしまうのではないでしょうか。それから、退化し始めると想像したのです。

マシュー・バーニー「フィールド」エンブレム

出典:http://cremaster.net

鈴木朋幸:

『拘束のドローイング9』では、ビョークと共演してますね。ビョークは音楽も担当しています。ふたりのコラボレーションは、どのように進んだのでしょう?

マシュー・バーニー:

お互いにとって、コラボレーションはとても自然なことでした。

ビョークはこれまで様々のアーティストと協働してるし、僕も今までのフィルム作品で色々なミュージシャンと仕事してきました。

何よりも、彼女の感覚と共通する点が多かったんです。似たような事に関心があったのです。そんな流れで、今回の作品に至りました。

マシュー・バーニー『拘束のドローイング9』(2005)日本公開ポスター・チラシ

デザイナー:FiSH Design 

ロゴ:マシュー・バーニー・スタジオ

マシュー・バーニー『拘束のドローイング9』

英題:Drawing Restraint 9

2005年/アメリカ/カラー/35mm/135分/1:1.66/SRD

脚本・監督:マシュー・バーニー 音楽:ビョーク(サウンドトラックCD/ユニバーサル ミュージック) 制作:バーバラ・グラッドストーン、マシュー・バーニー 撮影監督:ピーター・ストリートマン 出演:マシュー・バーニー、ビョーク、大島宗翠(裏千家)

日本の石油精製所。阿波踊りの隊列にタンクローリーが続く。

誉れ高き捕鯨船、日新丸の脇に停車すると、タンクの液体を甲板へと運んだ。

液体は楕円と長方形を組み合わせた「フィールド・エンブレム」型に固化してゆく。

そこへ、小舟で現れた西洋の客人2名が乗船。

ふたりは身を清め、婚礼衣装をまとい、茶室へと案内されるが…。

マシュー・バーニーとビョークの初コラボ作品。

マシュー・バーニー『拘束のドローイング9』1日だけの上映​​

【日時】2017年11月18日(土)19:10〜21:25

【会場】金沢21世紀美術館 シアター21(110席)     〒920-8509 石川県金沢市広坂1-2-1 

【料金】一般:1,500円 友の会:1,350円

LivePocket(ライヴポケット)にて電子チケット発売中!

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【ライヴポケット】 https://t.livepocket.jp/e/biobaroque

#拘束のドローイング9 #クレマスター #ビョーク #マシューバーニー

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