アピチャッポン本人が選ぶ短編集 プログラム#1 (合計:10作品110分)
『国歌(The Anthem)』
2006年/5’00”/タイ語・日本語字幕
タイの映画館では本編の上映前、国王への賛歌が場内に流れる。その間、観客は起立するという。国王讃歌の間、スクリーンにはタイ国内の名所が映し出されるそうだ。
そんなタイ独自の慣習をアピチャッポン監督なりに再定義した短編映画。特定の国を賛美するのではなく、すべてのシネマに捧げる賛歌として、上映会の冒頭に流すことにした。
ロンドンのアートフェア「フリーズ」からの委嘱で制作し、英国のシネコンで商業映画の前に何の前触れもなく上映されている。日本では福岡市が総合図書館に収蔵。本来は35mmプリントだが、今回は日本語字幕付のDCPで上映。
The Museum of Contemporary Art(2012). MOCAtv Presents Techno Mystic - The Anthem. Co-commissioned by Frieze Projects/LUX, 2006.
『第三世界(thirdworld)』
1997年/16’ 38” /タイ語・日本語字幕
タイ南部の離島、パンイー。その島を旅しながら、カメラをまわした。島の風景を隠喩的に描き出す白黒の映像。それと男の会話に接点があるのか?再構築型のドキュメンタリー。
「山形国際ドキュメンタリー映画祭」ライブラリー収蔵作品。16mmフィルム用カメラで撮影し、ビデオを完成フォーマットとしている。
『Empire』
2010年/2’00”/台詞なし
白く光るヘルメットの水中ダイバーが、漆黒の海中洞窟を進んでゆく。手をのばすと、小さな貝殻があった。ダイバーは何かを探り当てたいのか?探求と発見を描く短編。
オーストリア「フィルム・フェスティバル・ビエンナーレ」の予告編。2010年の開催PR用に使われた。今でもYouTubeで無料視聴できるが、今回はDCP版をスクリーンで公開する。
FilmFestivalViennale. (2011). Viennale-Trailer 2010: Empire (by Apichatpong Weerasethakul).
『My Mother’s Garden』
2007年/6’42”/台詞なし
ディオールからの委嘱作品。仏・ディオールのファイン・ジュエリーで、アーティスティックディレクターをつとめるヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ。その貴重な宝石コレクションを見せてもらうと、毒々しい植物が脳裏をよぎる。
偶然にも、アピチャッポンの母はランを育てていた。そんな母の庭を想像しながら、宝石をクローズアップで撮影。宝石と植物のイメージをまとう、ある種のアニメーション。
『アジアの亡霊(Ghost of Asia collaboration with Christelle Lheureux)』
2015年/9’11”/ タイ語・日本語字幕
ある少年を監督にしてみた!その少年が言うことなら、何でもきくというルールを決めた。ただし、1日だけ。遊びみたいな撮影をビーチで開始。とりとめのない少年の指示のもと、役者が振り回された。最後には、とうとう…。
フランスの映画監督、クリステル・ルローと共同制作。
『Monsoon』
2011年/3’11”
「なら国際映画祭」の企画「3・11 ア・センス・オブ・ホーム・フィルムズ」参加作品。東日本大震災への思いをこめて、上映時間が3分11秒のショートフィルムを世界中の映画監督が制作したプロジェクト。
アピチャッポン監督は、モンスーンの夜に流れる子守唄を描いた。遠く離れた恋人たちのために…。もはや風すら吹かない、何もかもが消えた土地のために。
劇中で男があの世の恋人にスカイプで交信する。彼は蛍を見つけて、恋人にみせるのだった。
Random Acts. (2017). Skyping after an earthquake | Monsoon by Apichatpong Weerasethakul | Short Film | Random Acts
『輝かしき人々(Luminous People)』
2007年/15’00”/ タイ語・日本語字幕
死者を弔う行事を再現。死後、時が経つにつれ、生前の記憶は薄らいてゆくものだ。人は死ぬと忘れられてしまうのか?
生きている者が故人の記憶を保つためにも、映画として記録しておく必要がある。そう考え、スーパー8(8mmフィルム)用カメラで撮影し、35mmフィルムを完成フォーマットとした。本来は35mmプリントだが、今回は日本語字幕付DCPで上映。
「カンヌ国際映画祭」監督週間 招待作品。
『Nimit』
2007年/15’00”/ タイ語・日本語字幕
タイ文化省からの委嘱作品。タイ国王(当時)を映画で描いて欲しいとの依頼が舞い込んだ。しかし、アピチャッポン監督にとって、国王とは静止画の中の存在だ。子どもの頃、自宅にあったカレンダーに国王の姿が印刷されていた。それぐらいしか、国王を知らない。実際に動いている姿を見たこともなければ、話したこともない。
結局、知らない人のことは映画化できない、という結論に至る。代わりに、自分がよく知る存在を撮ることにした。家族、恋人、飼い犬、好きな景色、光などを…。
『ブンミおじさんへの手紙(A Letter to Uncle Boonmee)』
2009年/17’40”/ タイ語・日本語字幕
長編映画『ブンミおじさんの森』(「カンヌ国際映画祭」最高賞受賞)のスケッチとなる短編映画。両作とも同じスタッフで撮影。ロケ地も同じで、タイ東北地方のナブア村。
長編のロケハンを兼ねるように村の様子をカメラにおさめ、モノローグ形式でブンミおじさんとの架空の対話を試みた。
ドイツ「オーバーハウゼン国際短編映画祭」グランプリ受賞作品。
『ヴァンパイア(Vampire)』
2008年/19’00”/ タイ語・日本語字幕
ルイ・ヴィトンからの委嘱作品。パリのエスパス ルイ・ヴィトンより、旅をテーマにした映像作品を依頼された。完成した作品は、展覧会と映画館で発表されるという。
アピチャッポン監督は、作品内で旅を描くのではなく、自ら旅に出てしまう。撮影クルーをともない、向かった先は旅というより冒険に近い環境だった。
タイとミャンマーの国境付近にある山。その山には、人の生き血を吸うヴァンパイア鳥が生息するという。果たして、吸血鬼鳥をカメラにおさめられるのか?
アピチャッポン本人が選ぶ短編集 プログラム#2 (合計:5作品91分)
『国歌(The Anthem)』
2006年/5’00”/タイ語・日本語字幕
タイの映画館では本編の上映前、国王への賛歌が場内に流れる。その間、観客は起立するという。国王讃歌の間、スクリーンにはタイ国内の名所が映し出されるそうだ。
そんなタイ独自の慣習をアピチャッポン監督なりに再定義した短編映画。特定の国を賛美するのではなく、すべてのシネマに捧げる賛歌として、上映会の冒頭に流すことにした。
ロンドンのアートフェア「フリーズ」からの委嘱で制作し、英国のシネコンで商業映画の前に何の前触れもなく上映されている。日本では福岡市が総合図書館に収蔵。本来は35mmプリントだが、今回は日本語字幕付のDCPで上映。
The Museum of Contemporary Art(2012). MOCAtv Presents Techno Mystic - The Anthem. Co-commissioned by Frieze Projects/LUX, 2006.
『この光、より多くの光(This And Million More Lights)』
2006年/1分/サイレント(無音)
ネルソン・マンデラ財団「46664:あなたの1分をエイズのために」キャンペーン参加作品。チカチカする蛍光灯。プールに飛び込もうとする男の子。そんな映像がオーバーラップする。
『マレーと少年(Malee and the Boy)』
1999年/26分45秒/タイ語・日本語字幕
音声と映像を分離させた作品。10才の少年にマイクを渡し、バンコク市内で音を採集させた。その音が録音されただろう場所を撮影クルーが想像し、ビデオに記録した。さらには、現場付近で入手したタイのマンガ本から、テキストを引用して本編にミックスしている。
毎日、デパートのショーウィンドウで宝石を眺めていた少女。彼女の名はマレー。子どものマレーには、もちろん宝石を買うお金なんてない。突然、その宝石を買ってあげよう、と彼女に声をかけてきた大人の男。マレーは怖くなり、家に逃げ帰った。そんなマンガのストーリーが別々の収録された音声と映像にオーバーラップするのだった。
『ハタナカマサトと撮るノキア(Nokia Short collaboration with Masato Hatanaka)』
2003年/2分/台詞なし(音声のみ)
ノキアの携帯端末(ガラケー)で撮影した作品。当時、ガラケーで写真は撮れたが、動画を撮影できる機種はわずかだった。その宣伝も兼ねて、端末のメーカーより委託された短編。防水機能を活かして、プールでも撮影。日本人の音楽家、畑中正人がサウンドを担当した。
『メコンホテル(Mekong Hotel)』
2012年/61分/タイ語・日本語字幕
舞台となるのは、メコンホテル。タイとラオスの国境を流れるメコン川流域にある設定だ。そのホテルで人肉を喰らう霊を主人公にしたホラー映画を撮影するのが、アピチャッポン監督と撮影クルー。
ロケ撮影の様子をメイキングビデオ風に紹介する一方で、撮影しているはずのホラー映画の本編シーンが本編に織り込まれ、ドキュメンタリーとフィクションの要素が往来する作風。2002年に執筆した脚本「エクスタシー・ガーデン」にもとづいている。
The Match Factory(2012). Mekong Hotel (2012) | Trailer | Apichatpong Weerasethakul
アピチャッポン本人が選ぶ短編集 プログラム#3 (合計:5作品93分)
『国歌』(英題:The Anthem)
2006年/5分/タイ語・日本語字幕
タイの映画館では本編の上映前、国王への賛歌が場内に流れる。その間、観客は起立するという。国王讃歌の間、スクリーンにはタイ国内の名所が映し出されるそうだ。
そんなタイ独自の慣習をアピチャッポン監督なりに再定義した短編映画。特定の国を賛美するのではなく、すべてのシネマに捧げる賛歌として、上映会の冒頭に流すことにした。
ロンドンのアートフェア「フリーズ」からの委嘱で制作し、英国のシネコンで商業映画の前に何の前触れもなく上映されている。日本では福岡市が総合図書館に収蔵。本来は35mmプリントだが、今回は日本語字幕付のDCPで上映。
『Trailer for CinDi』
2011年/1分/台詞なし (サウンドのみ)
韓国の「シネマ・デジタル・ソウル・フィルムフェスティバル(CinDi)」からの委嘱作品。2011年に同映画祭の告知で使用された。今もYouTubeで視聴できる。
Bwudhiprecha.(2011). YouTube” CinDi FIlm Festival 2011 official trailer by Apichatpong Weerasethakul.”:
『ダイヤル0116643225059をまわせ!』(原題:0116643225059)
1994年/5分19秒/タイ語
シカゴ美術館附属美術大学の修士過程時代に制作。実験映画の手法に惹かれ、当時生活していたアパートをフィルムで撮影。そのフィルムに母親の古い写真をつなぎあわせた。音声は母との国際電話。米国からタイの母親に電話する時の番号がタイトルである。オリジナルは16mmプリントだが、今回はDCPで上映。
『蒸気』(英題:Vapour)
2015年/21分/サイレント(無音)
韓国の「釜山映画祭」による企画で制作。かつて8年に渡り、アピチャッポンが住んでいた村。そのは住民と国が16年もの間、土地の問題を争っていた。その地で撮影した短編作品。雲のような蒸気が村を覆ってゆく。何もかもが、薄らぼやけてゆく。
『幽霊の出る家』(英題:Haunted Houses)
2001年/60分/タイ語・日本語字幕
タイで人気のメロドラマを再現。国民的なTVドラマのストーリーをそのまま使い、一般人を出演させている。プロの俳優でない人々がひとつの役をリレー形式で演じているため、出演者の容姿が場面ごとに変わってしまう。実社会では裕福な人が劇中では労働者を演じ、労働者階級の人を上流階級の役に起用している。2001年「イスタンブール・ビエンナーレ」出品作。東京オペラシティアートギャラリーでも展示された。
アピチャッポン本人が選ぶ短編集 プログラム#4 (合計:8作品90分)
『国歌』(英題:The Anthem)
2006年/5分/タイ語・日本語字幕
タイの映画館では本編の上映前、国王への賛歌が場内に流れる。その間、観客は起立するという。国王讃歌の間、スクリーンにはタイ国内の名所が映し出されるそうだ。
そんなタイ独自の慣習をアピチャッポン監督なりに再定義した短編映画。特定の国を賛美するのではなく、すべてのシネマに捧げる賛歌として、上映会の冒頭に流すことにした。
『La Punta』
2013年/1分33秒/台詞なし(サウンドのみ)
「ベネチア国際映画祭」の記念企画「ベネチア70 ― フューチャー・リローデッド」により制作。タイ国内で撮影した映像にペルーのリマで採集したサウンドを組み合わせた。今もYouTubeで視聴できる。
BiennaleChannel. (2013). YouTube” Venezia 70 Future Reloaded - Apitchapong Weerasethakul”:
『M Hotel』
2011年/11分50秒/タイ語・日本語字幕
香港・九龍の油麻地(ゆまち)に建つMホテル。1702号室にふたりの男がいる。彼らは映画の撮影クルーで、ふたりとも初めての香港。午後の空き時間、部屋で記念撮影をしていた。外では別のスタッフが上着にマイクを仕込んでいる。その服を着て、歩きだすと…。
スーパー8(8mmフィルム)用のカメラで撮影し、編集段階でデジタル化している。
『エメラルド』(英題:Morakot(Emerald))
2007年/11分/タイ語・日本語字幕
1980年代、タイの経済成長にともない隆盛を極めたバンコクのホテル。その名をMorakotと呼んだ。エメラルドを意味するタイ語である。
そのホテルは寂れ、やがて廃墟となってしまう。廃業に追い込まれたホテルの記録に個人の記憶を交錯させた短編で、部屋のベッドにぼんやり浮かび上がる男女3名が恋の話をする。3名はアピチャッポン監督作の常連俳優たち。
東京都現代美術館「SPACE FOR YOUR FUTURE──アートとデザインの遺伝子を組み替える」展で初出。後に同館が収蔵。当初、映像インスタレーションとして発表したが、短編映画のようにスクリーンでの映写もする作品となった。
『Mobile Men』
2008年/3分15秒/タイ語・日本語字幕
「世界人権宣言」60周年記念プロジェクト参加作品。本作を含め、全部で22本の短編映画が制作され、オンラインで発表されたプロジェクトである。今もYouTubeで視聴できる。
タイ国内を走行するピックアップ・トラック。荷台に乗るのは若い男たち。それぞれ別の地域の出身だ。ルーツも違う。出演の男たちは、皆、自分だけを映すようにカメラの向きを変える。しかし、カメラは他の何かもとらえてしまう。
終始、マイクに風を切る音が入っている。出演者は何かを訴えるが、風の音で遮られてしまう。
artfortheworld001. (2009). YouTube” Mobile Men by Apichatpong Weerasethakul”:
『Cactus River』
2009年/10分9秒/サウンド
白黒のビデオダイアリー。
アピチャッポン監督作の常連である女優、ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー。仲間はジェンと呼ぶ。ある日、彼女が名前を変えたと聞く。新しい名前は、タイ語で水という意味だ。改名後、彼女は退役米兵と結婚した。
夫婦を訪ねたアピチャッポン監督は、メコン川に想いを巡らせた。ジェンが言うには、メコン川の水はやがて枯れてしまう。水という名の彼女はどうなるのだろう?
Walker Art Center. (2012). YouTube” Cactus River (Khong Lang Nam)”
『Footprints』
2014年/5分50秒
メキシコの映画監督、ダニエル・グルーネルによるプロジェクト参加作品。サッカーと日常生活を描くオムニバス企画で、2014年ブラジルでの FIFAワールドカップ期間中に放映された。当時、アピチャッポン監督は『光りの墓』を撮影中。その現場でタイの自然、役者の姿、眠りと夢を扱う短編を撮ったのが本作。タイの自然、役者の姿、眠りと夢を扱う作品とした。
『Worldly Desires』
2005年/42分32秒/タイ語・日本語字幕
韓国の「全州映画祭」によるオムニバス企画「デジタル三人三色」のために制作した作品。本編の中で、ピンパカ・トゥイラ監督が『Deep Red Bloody Night』という映画を撮影している。森をさまよう男女の話だった。
実はその映画自体が架空の企画で、何も知らずに撮影するスタッフを別のカメラでとらえたのが本作。トゥイラ監督が撮影した映画は、本作の劇中劇として使用されている。
プログラム#1、#2、#3、#4は「岡山芸術交流2022」連携プログラムとして、シネマ・クレール丸の内で上映
プログラム#1は2022年「鎌倉山・古民家ハイブリッド映画祭」で上映
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