【キーワード集】マシュー・バーニーの最新フィルム作品『リダウト』(2018)



2019年ハロウィンの夜、最新のフィルム作品『リダウト』(2018)を日本プレミア公開。すると、チケット完売、満席、大入りとなりました。翌日、日本プレミアのアンコールも満員御礼。残券ゼロの大盛況でした。


2020年1月の東京都写真ホールを皮切りに、大阪のシネ・ヌーヴォ、京都の出町座で上映して、東京凱旋では、伝説的フィルム作品『クレマスター』サイクル全5部作(1994-2002)、ビョークと協働のフィルム『拘束のドローイング9』(2005)も含めたマシュー・バーニーのフィルムを合計7本も上映する予定でした。


ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、東京都写真美術館が閉館。上映会も延期(一旦中止)です。いつ再開して、いつ上映するかを検討中です。


そんな中ですが、最新フィルム『リダウト』のキーワードを紹介して参りましょう。


既に、ご覧になったお客様は、謎解きにお役立て頂ければ幸いです。これからの皆様は、前知識になるかも知れません。日々、少しずつ追加して、合計で9つのキーワードを紹介してゆきます。


原典は、2019年9月28日〜2020年1月12日、北京のUCCA Center for Contemporary Artで開催した「Matthew Barney: Redoubt」展で無料配布のグロッサリー(用語集)となります。

元の英文も併記します。得意な方からの校正、ご意見は歓迎です。お気軽にご連絡をください。


キーワード#1:アイダホ

アメリカ合衆国50州のひとつ。広大な土地の東部にロッキー山脈が連なり、その辺りは国内屈指の山岳地帯となっている。

アメリカで3番目に広い州で、390万エーカー(約158万ヘクタール)は自然のままの荒れ地。州の6割以上は公有地である。

州都のボイジーで、マシュー・バーニーは育った。1970年代から80年代をアイダホ州で過ごした彼は、その隔離された感じに突き動かされた。

曰く、「当時は今よりもっと孤立感が強くて、山の向こう側で何が起きてるのか気になる10代の自分には、それこそ大きなものだった。」

このキーワード集で後述する「オオカミの再導入」(オオカミが絶滅した地域に、人手によって再びオオカミの群れをつくる試み)など、アイダホ州固有の事柄は神話的な意味合いを感じさせる。

マシュー・バーニーの最新フィルム作品『リダウト』(2018)は、ある意味、アイダホ州やそこに宿る力のポートレイトといえよう。個展「マシュー・バーニー:リダウト」を企画したキュレーターのパメラ・フランクは、以下のように記述している。

美しいが、同時に問題を抱える所。破滅、そして再生の両極を持つ所。完全なる孤立に駆り立てられ、実際にそう動いている。しかし、自然的な要素と人間的な物語が両方向から交錯する所。

そのような所として、マシュー・バーニーはアイダホを描いている。

本題からそれるが、アイダホ州の地図を右に90度回転させると、銃のような形になる。その形をデザインとして、マシュー・バーニーはフィルム『リダウト』のポスターに採用した。



キーワード#2:リダウト

英単語の「redoubt(リダウト)」には、いくつかの意味がある。それぞれ違う意味だが、何をおいても、まずは軍事的な要塞(ようさい)を指す単語として使われる頻度が高い。敵の攻撃を防ぐために、土などで築く仮設の建造物を「リダウト」と呼ぶ。

それから、物理的な要塞(ようさい)の比喩としても使う。例えば、他人には入り込めない、個人の心理的な領域を「リダウト」という。

外部からの影響を受けず、昔ながらのイデオロギーや宗教、文化が根強く残る場所や地域を指すのにも、「リダウト」という単語が用いられる。

さらには、以下に述べる政治運動を指す言葉でもある。マシュー・バーニーは、その意味を重視したようだ。

「リダウト」または「アメリカン・リダウト」と呼ばれる運動がある。サバイバリスト、つまり分離論者による主張で、アメリカ西部の土地を広々と使い、人口密度を高めることなく、人々の移住を促進すべきだという。

その主張に賛同する者は極右に分類され、アメリカ西部の一帯に原理主義的な信条を守り抜くコミュニティをつくるべきだ、と盲信している。そう信じる者たちは、今のアメリカ文化は荒廃し堕落し切っているという。だからこそ、荒廃や堕落を避けるために、自分たちは見た目からして純朴で、より道徳的な人生を送ろうと、アイダホのような田舎で電気や水を自給しながら暮らしている。

物理的にも、心理的にも、観念的にも、そのように外部から一斉に切り離された状態。それに対して、マシュー・バーニーは関心を持った。そうした特殊性を大枠としてとらえた上で、いかにしてアイダホ州ソートゥース山脈の辺りに広がる様々な関係性を描けるか、と考えて作品制作に打ち込んだ。



キーワード#3:ディアナとアクタイオン

アイダホ州の中央部に位置し、外部から閉ざされたソートゥース山脈の一帯。

マシュー・バーニーのフィルム作品『リダウト』(2018)は、そこを舞台にしている。古代ローマ神話「ディアナとアクタイオン」を参照しながらも、その神話を別次元に昇華させたのだ。

「ディアナとアクタイオン」は、帝政ローマ時代の詩人、オウィディウスによる「変身物語」の第三巻に収められている。

物語では、猟師のアクタイオンが、知らぬ間に小さな洞穴に迷い込んでしまう。そこでは、処女神にして狩猟の女神、ディアナが水浴していた。

突然の辱めに激怒した女神は、あ然とする猟師に水しぶきを浴びせ、彼を鹿に変えてしまう。鹿になった猟師が、自分の獣猟犬に噛みちぎられる話だ。

その神話を題材にした西洋美術は数多くあれど、マシュー・バーニーの『リダウト』が新たな物語に仕上がったのは、配役に負うところが大きい。現代的かつ、少しばかり政治的である。なにせ処女の女神を演じるのが、全米ライフル射撃チャンピオンのアネット・ワクターなのだから。彼女がアメリカ森林局のレンジャーを追跡する設定になっている。

マシュー・バーニーは、旧作でも神話や民話の類を作品の下敷きにしている。伝説的フィルム作品『クレマスター』サイクル全5部作(1994-2002)や6時間の映像オペラ『リバー・オブ・ファンダメント』(2014)でも、そうした。

彼にとって、神話は船のような器に相当する。ストーリーを重層的に紡いでゆくにあたり、必要不可欠な器なのだろう。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 〈ディアナとアクタイオン〉(1556-1559)



キーワード#4:電気めっき

電気めっき加工をした物質は、表面が金属の薄い膜で被われる。

マシュー・バーニーの作品でいうと、まず金属板が硫酸銅を含む水溶液に浸される。そこに直流の電気を通すと、水溶液中の銅イオンが金属板の表面に付着し、融合してゆくというプロセスだ。

フィルム作品『リダウト』(2018)において、マシュー・バーニーは銅板彫刻師の役を演じている。エッチングするにあたり、彼は銅板を入手した。銅板の表面は、グランドと呼ばれるアスファルトが原料の溶液で覆われている。その表面にガリガリと山の景色を彫り込み、電気めっき師(K.J.ホームズ)のトレーラーハウスに持って行のだ。

トレーラーハウスのスタジオで、銅板彫刻がめっき槽に浸され、化学反応が始まる。やがて銅が表面の線に沿うように付着してゆく。そんな様子を劇中で描いた。

まったく同じ作業工程を踏まえて、マシュー・バーニーは複製をつくった。そして、個展で発表する。その作品群は一連のシリーズでありながらも、それぞれに電気めっきを施す時間を変えていた。結果的に加工時間が短い銅板は、まだエッチングの線がはっきりしていて、何が描かれているのか識別できる。一方、長時間の加工を施したものは、銅が表面に広がってしまい、さながら抽象画のような様相を呈す。

テーマに関連づけていうと、マシュー・バーニーが6時間の映像オペラ『リバー・オブ・ファンダメント』(2014)でも多用した(オウィディウスによる「変身物語」のような)変容、宇宙を想わせるもの、そして錬金術のような魔力。そんなものを表現しているのが、電気めっきだろう。

「岡山芸術交流 OKAYAMA ART SUMMIT 2019」に出品したマシュー・バーニー作品

電気めっき加工の工程をみせている



【追記】電気めっき加工 ◎原典には未掲載(テキスト:鈴木朋幸)

水は電気を通さない。 しかし、水に塩化銅(塩素と銅が化合した物質)を溶かした水溶液は電気を通すようになる。

その塩化銅水溶液に強い電気を流し続けると、塩素と銅に電気分解される。具体的には、+極からつながる陽極では、 水溶液中の塩化物イオンが塩素原子になる。換言すると、陽極からは、気体の塩素が発生する。逆の−極からつながる陰極では、水溶液中の銅イオンが銅原子になる。そこで銅が発生して電極にくっつく。

それを活用した技術が「電気めっき」である。

フィルム作品『リダウト』(2018)において、マシュー・バーニーはアイダホ州ソートゥース山脈の雪山に銅板を持ち込んだ。 極寒の中、その銅板にエッチングをする。それをトレーラーハウスに持ち帰り、水溶液に浸して、電気を流すのだった。

そんな「電気めっき」作品の制作プロセスを記録したドキュメンタリーという見方もできるのが、最新のフィルム作品『リダウト』になる。

Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Hugo Glendinning



キーワード#5:オオカミ

何世紀にも渡り、アメリカでは好き勝手に狩猟ができた。その結果、オオカミの群が激減してしまう。そこで1974年になり、まずハイイロオオカミを絶滅危惧種に指定して、連邦政府は本気で「オオカミの再導入」に取り組み始めた。

当時、アイダホ州もオオカミの「回復地域」に指定されたが、その地に若かりし頃のマシュー・バーニーは暮らしていた。

「オオカミの再導入」は激しい議論を巻き起こすことになる。牧場主は猛反発した。自分らの家畜がオオカミに殺されると考えたためだ。狩猟者やアウトドア用品店の関係者は、獲物の数が減ることを懸念していた。一方、環境保護を訴える人々は、オオカミの群れが生態系のバランスを保つ、と主張した。

アイダホを始め、オオカミの「回復地域」に指定された州では、議会、公開討論会、州をまたいだ公聴会で繰り返し討論されたが、何年も収拾がつかず、ようやく1995年に連邦政府が「オオカミの再導入」に踏み切ることになる。

この長きに渡る論争は、マシュー・バーニーの人格形成に大きくのしかかった。その地で成長した若者にとって、避けて通れない社会的要因だったのだ。オオカミにまつわる問題は、アイダホ周辺の政治的矛盾や対立を凝縮している上、人類と自然の複雑な関係に目を向けるきっかけにもなっていた。

Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Hugo Glendinning


キーワード#6:アメリカ西部

19世紀、アメリカ合衆国の領土を拡大する者には、西部が手つかずで自由な希望の地にみえた。

米国の歴史学者、フレデリック・ジャクソン・ターナーは、1893年の論文でアメリカの発展を西部開拓の精神と結びつけている。フロンティアによる開拓で領土ごとにセクションが形成されると、別のセクションと対立しつつも、より大きな全体に統合されたのがアメリカ的である、と唱えた。

18世紀後半、罠でビーバーを捕らえ、毛皮をとるフランスのトラッパーやスペインの征服者がロッキー山脈を「発見」したとされるが、その地には既にネズ・パース族、ショショーニ族、クロウ族、ラコタ族、ユト族などの先住民族が暮らしていた。実際、トラッパーや征服者(コンキスタドール)も、アメリカ先住民の姿を目撃していた。

やがて、ロッキー山脈の周辺にアメリカ開拓民が定住しだすと、合衆国政府はスペインやイギリスの一掃を図る。当時、最も手荒に排除されたのが、ほかならぬ先住民だった。

マシュー・バーニーはフイルム作品『リダウト』の「ハント5」(第5巻)で、舞踊家・振付師のサンドラ・ラムッシュを起用した。先住民であるクリー族の彼女が、米国在郷軍人会の施設(退役軍人の集会所)で、フープパフォーマンスを行うのだ。これまでに描かれてきたアメリカ西部とは違った一面を、そのシーンから読み取れるはずだ。

Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Laura Nespola


キーワード#7:銃

今日のアメリカで、政治的には最大級の争点。それが、銃の問題だろう。議論は二極化しており、一方は誰が銃を所有できて、どんな銃の販売が許可されるのかを厳しく規制すべき、と主張している。もう一方は銃規制を最小限にとどめるべきで、できれば規制などしないのが理想と考えている。

また、銃というものは、アメリカ社会に存在する大きな断層を顕にしている。米国では全世帯のうち30%が銃を所有しているが、田舎に行くと銃の所有率が60%に跳ね上がるのだ。

銃規制の論争が激化したことで、過激な一派の活動に火を付けてしまった。例えば、全米ライフル協会は、国内で銃を販売する際の法案すべてに猛反対する姿勢をみせてきた。

そうした米国社会に特異な現象をマシュー・バーニーは、このフィルム作品に反映させている。神話「ディアナとアクタイオン」の舞台を人里離れた現代のアメリカに置き換えたフィルムが『リダウト』(2018)といえるが、元来は“狩猟の女神”であるはずのディアナの役に、ライフル射撃の米国代表選手、アネット・ワクターを起用した。

このディアナは、ライフル銃を通して世界を見ている。彼女を追ってくるのは、オオカミか?はたまた、森林警備隊員でもある銅板彫刻師か?いずれにせよ、彼女の獲物となり、今度は自分が追う側になってゆく。そこで描かれるのは、狩る側と狩られる側の関係性であり、その関係性の逆転でもある。

本題からそれるが、アイダホ州の地図を右に90度回転させると、銃のような形になる。その形をデザインとして、マシュー・バーニーはフィルム『リダウト』のポスターに採用した。

Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Hugo Glendinning



キーワード#8:山火事

フィルム作品『リダウト』(2018)が映し出すもので、自然現象と人間活動の両域にまたがるのが、山火事である。山火事こそ、アイダホ州の中部を具現化した光景といえよう。

一方で、山火事は自然現象と呼べる。しばしば落雷が原因で発火するし、本質的に無害で森林の再生につながるものだ。他方で、山火事は人間の過失や放火が原因で引き起こされる。その割合が増えていて、地球温暖化による気温上昇への影響も懸念されている。

山火事がよく登場するのは架空のアメリカ大自然、そして俗にいう“西部”を描く時だったりもする。

マシュー・バーニーとの関連でいうと、アイダホの山火事で焼けた巨木だろう。フィルム『リダウト』と並行した個展で、彼は大がかりな彫刻のシリーズを発表している。その中に、山火事で燃えた木の幹があった。長い木の芯をくり抜き、内部に真鍮(しんちゅう)と銅を打ち込んでいる。作品の一部は、黒く焦げて炭と化している。

アイダホの自然を展覧会場まで物理的に移動させるという手法で、フィルムと彫刻に関するモノ、及びテーマを本来とは別の角度から魅せた感がある。

2019年3月、米・イェール大学美術館でのマシュー・バーニー個展の出品作


キーワード#9:ダンス

マシュー・バーニーのフィルム作品『リダウト』(2018)には、台詞がない。大体において、ダンスがコミュニケーションの手段となっている。

その振付を担当したコリオグラファーが、エレノア・バウアーである。彼女はコーリング・ヴァージンの役でフィルム『リダウト』に出演したが、そのほかにトラッキング・ヴァージンという役(ローラ・ストークス)も登場する。両者は劇中に即興ダンスの「コンタクト・インプロヴィゼーション」を披露する。

「コンタクト・インプロヴィゼーション」とは、木村覚による「artscape」の解説を借りれば、「重力を意識しつつ」相手と身体の「接触を続けるデュエット形式が中心の即興パフォーマンス」ということになる(2020)。

『リダウト』の中でヴァージン役のふたりは、森の動物を模倣する。さらには、これから先に起こることを身体で表現もする。

同作の後半では、別のダンスが紹介されている。アメリカ先住民の伝統を現代風にしたフープパフォーマンスだ。マシュー・バーニーが演ずる銅板彫刻師が、米国在郷軍人会の施設(退役軍人の集会所)に近づく。すると、施設内で舞踊家・振付師のサンドラ・ラムッシュが、ひとりフープダンスをしているのだ。その姿を銅板彫刻師が覗き見る設定になっている。

監督としてマシュー・バーニーは、次のように語った。「アイダホという地域、そこの風土には幾層もの重なりが見られ、そのひとつがダンスや身体表現という“言語”である点を鑑みると、現代におけるネイティブアメリカンの踊りを『リダウト』の中で描くことに意義がある」と。


【参考】木村覚. (2020). 「artscape」 コンタクト・インプロヴィゼーション

https://bit.ly/38nygjB


Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Hugo Glendinning



翻訳: アンジー・ナオコ

編集:長尾望

協力:横山源二

監修:鈴木朋幸


令和2年度 文化芸術活動の継続支援事業



Idaho:

The American state of Idaho is a large expanse of land that contains some of the most rugged mountain ranges in the U.S. Over 60 percent of the state is public land, and with 3.9 million acres of wilderness, it is the third wildest state in the country.


Matthew Barney grew up in the capital city of Boise in the 1970s and 80s, where he was moved by the remoteness of the region. As he noted, “That isolation felt more significant than it does now, and that was a challenge for a teenager interested in finding out what was happening on the other side of the mountain.”

Local issues, such as the reintroduction of wolves discussed later in this glossary took on mythic significance.

Redoubt is in part a portrait of this region and the tensions that inhabit it. As exhibition curator Pamela Franks write, Barney depicts “a place both beautiful and problematic, a place of both extreme destruction and regeneration, a place that urges and enforces utter isolation yet insists on the ultimate interconnectedness of the elements of nature and the shared stories that make up human experience.”

Redoubt

The word “redoubt” has a few distinct meanings. It firstly demonstrates a military fortification, often a temporary or earthen defensive work.

Related to this physical definition is its metaphorical usage, describing a psychological position that one retreats to, or an area where a particular ideology, religion, or culture remains exceptionally strong.

Also salient to the artist is a political movement called the American Redoubt, a survivalist, secessionist campaign that advocates for migration to the sparsely populated American West to create a community that adheres to far-right ideological tenets.

Adherents believe that American culture has become decadent and depraved, and many live off the grid in the countryside of states like Idaho in search of an ostensibly pure, more moral lifestyle.

Matthew Barney is interested in how this multivalent concept, simultaneously connoting physical, psychological, and ideological seclusion, can describe many of the tensions that permeate the Sawtooth region of Idaho.



Diana and Actaeon

In Redoubt, Matthew Barney loosely reinterprets the ancient Roman myth of Diana and Actaeon, setting it in the remote Sawtooth Mountain of central Idaho.

The story comes from Book 3 of Ovid’s Metamorphoses. Actaeon, a hunter, stumbles upon a hidden grotto where Diana, the chaste goddess of the hunt, is bathing. Overwhelmed by rage, the goddess splashes water at the stunned Actaeon, transforming him into a stag, and he is torn apart by his own hounds.

It is a common motif in the iconography of Western art, and in Redoubt, Barney breathes new life into the narrative through its contemporary, subtly political dramatis personae. Here, Diana is played by Anette Wachter, a champion sharpshooter, and her pursuer is a ranger for the US Forest Service.

Barney has drawn on mythology and folklore in many of his previous works, including CREMASTER Cycle (1994-2002) and River of Fundament (2014). For the artist, myth serves as a sort of vessel – an elemental, compelling framework onto which he builds layers of narrative.



Electroplating

Electroplating is a process by which metal is coated onto a surface.


The surface, here a metal plate, is immersed in a chemical solution containing copper sulfate. By adding an electrical current, copper particles in the solution are attracted to the plate, and metal gradually accretes.


In the film Redoubt, Matthew Barney plays the role of the Engraver, carving scenes onto copper plates coated in asphaltum. He subsequently takes the engravings to the trailer/studio of the Electroplater (K.J. Holmes), where she immerses them in an electrochemical bath. The ensuing chemical reaction causes copper growths to form along the lines etched by the Engraver.


The series on display here comprise identical reproductions of the engravings made on set, each electroplated for variable amounts time. In plates immersed for a shorter period, the original image is still clearly visible, while those treated for longer turn into semi-abstract fields of copper.


Thematically, electroplating evokes transformation (as in Ovid’s Metamorphoses), cosmology, and alchemy, which featured heavily in Barney’s previous filmic cycle, River of Fundament (2014).



Wolves

After centuries of unchecked hunting, the number of wolf packs in America fell dramatically. The grey wolf was first added to the endangered species list in 1974, causing the federal government to formulate a plan to reintroduce the animal to the American landscape.


In his early life, Matthew Barney lived in Idaho, one of the regions in which these measures were implemented.


However, the proposal sparked an intense debate. Ranchers strongly opposed the reintroduction, believing wolves would decimate their flocks. Hunters and outdoor equipment retailers were concerned that prey populations would be affected. On the other hand, environmentalists argued that wolf packs would improve the overall ecology.


Idaho and the greater region underwent years of legislative discussion, public debate, and interstate hearings until the government ultimately implemented the policy in 1995.


For Barney, this controversy is an integral part of the social backdrop to his formative years. It encapsulates the contradictions and tensions of the region’s politics and serves as an opening to explore the complex relationship between humanity and nature.



The American West

In the expansionist America of the nineteenth century, the West connoted a land that was unspoiled, free, and full of promise.


In 1893, American historian Frederick Jackson Turner postulated that the frontier was the defining aspect of American society and that as soon as the border was tamed, a new frontier would be needed to compensate for this part of the American psyche.


When French trappers and Spaniards “discovered” the Rocky Mountains in the late eighteenth century, they found the area was already home to several tribes of Native Americans, including the Nez Perce, the Shoshone, the Crow, the Lakota, and the Ute. Later, to accommodate settlers, the US government purged the western frontier of the Spanish, the British, and, most violently, much of the Native population.


The Hoop Dancer, who appears in Hunt 5, is played by dancer and choreographer Sandra Lamouche of the Bigstone Cree nation. By setting her dance in an American Legion post (a community space for veterans), the film folds in another layer of meaning to this portrait of the American West.



Guns

Guns are one of the most contested topics in American politics today. The two sides of the debate are extremely polarized, with some advocating for strong limitations on who can own guns and which guns can be purchased, while others would like as few restrictions as possible, ideally none.


Gun culture also exposes a major fault line in American society – while roughly 30% of American households own guns, in the countryside that figure rises to 60%. These political disputes are compounded by the work of extremist gun advocacy group like the National Rifle Association, which fiercely oppose any laws that would restrict gun sales in the US.


It is no coincidence that in restaging the myth of Diana and Actaeon in the contemporary American countryside, the goddess of the hunt is portrayed by NRA champion sharpshooter Anette Wachter. In the film, Diana’s rifle is the literal lens through which she views the world. It is also the kinetic link between predator and prey, whether that prey be wolves or the Engraver (who is also a US Forest Service Ranger) pursuing her.



Wildfires

As a force that links natural processes and human interventions, wildfires are a pivotal component of the landscapes of Redoubt, shaping the environment of central Idaho.


Wildfires naturally occur, frequently caused by lightning, and are not inherently detrimental, allowing for the renewal of forests. However, they can also be caused by negligence or arson, and are becoming more common and severe as temperatures rise due to global warming.


Wildfires feature heavily in the American cultural imaginary of nature and “the West”.


For the series of large-scale sculptures in this exhibition, Barney harvested tree trunks incinerated by wildfires in central Idaho, hollowed out their cores, and cast them in brass and copper, creating an image of their charred forms. This direct displacement of the Idaho landscape onto the exhibition space adds a new layer of presence to the objects and themes actuated by the project.



Dance

There is no dialogue in Redoubt, instead, dance is the main form of communication in the film. Eleanor Bauer, who plays the Calling Virgin, is also the film’s choreographer.


The two Virgins engage with one another through contact improvisation, a relational form of improvised dance. At times they imitate the animals of the forest or foretell the evolution of the narrative through their gestures. Later in the film, the Engraver comes across the Hoop Dancer (Sandra Lamouche) in an American Legion post, where she performs a solo hoop dance, a modern style of Native performance.


The artist had noted, “ As Redoubt is on some level an engagement with the many layers of this region and its landscape, told through the language of dance and movement, I felt it was important to include a form of contemporary Native American dance.”



マシュー・バーニー『リダウト』

制作・脚本・監督:マシュー・バーニー

音楽:ジョナサン・べプラー

撮影監督:ペーター・シュトリートマン

編集:キャサリン・マケリー

製作:マシュー・バーニー、セイディ・コールズ、バーバラ・グラッドストーン

プロデューサー:マイク・べロン

照明:クリス・ウィジェット

振付:エレノア・バウアー

プロダクション・デザイン:Kanoa Baysa

アートディレクター:Jade Archuleta-Gans

出演:

アネット・ワクター(ディアナ役):ライフル射撃米国代表選手

エレノア・バウアー(コーリング・ヴァージン役):振付師・ダンサー

ローラ・ストークス(トラッキング・ヴァージン役):ダンサー・アーティスト・コントーショニスト(曲芸師)

K.J.ホームズ(電気めっき師役):ダンスアーティスト・歌手・詩人・女優

マシュー・バーニー(銅板彫刻師役)

サンドラ・ラムッシュ(フープパフォーマー役):ネイティブアメリカン・フープダンスのパフォーマー

配給:トモ・スズキ・ジャパン

後援:アメリカ大使館

協力:Matthew Barney、Gladstone Gallery New York and Brussels、Angie Naoko

Matthew Barney, Redoubt, 2018. Production still.

© Matthew Barney,courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels, and Sadie Coles HQ, London. Photo: Hugo Glendinning



マシュー・バーニー

米・サンフランシスコ生まれ。アイダホ州ボイシで少年時代を過ごし、1989年にイエール大学卒業。以後現在に至るまでニューヨーク在住。

学生時代にアスリートだった経験から、アートの中で身体の限界と超越を探究。創作活動の初期より、映像や彫刻、写真やドローイング、パフォーマンスや身体表現とメディアを横断する作品群を発表している。美術界にデビューすると同時にスターになり、1993年ヴェネチア・ビエンナーレのアペルト賞、1996年ヒューゴ・ボス賞など受賞多数。

身体に負荷をかけて素描するパフォーマンス《拘束のドローイング》シリーズを続ける中、記録映像にフィクション的な要素を加えたビデオ作品に行き着く。1994年から2002年までの8年間でフィルム作品シリーズ『クレマスター』サイクル全5章を発表。その5部作のうち3作品で、音楽家のジョナサン・べプラーと協働。

2005年ビョークが出演・音楽で協働したフィルム作品『拘束のドローイング9』を金沢21世紀美術館での個展でプレミア公開。同年「ベネチア映画祭」にも招待された。

ジョナサン・べプラーと共同制作した6時間の映像オペラ『RIVER OF FUNDAMENT』では、監督・制作のほか自ら出演するかたちを取っている。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)、金沢21世紀美術館(金沢)、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)など世界各地の美術館にて個展を開催。最新のシリーズ「リダウト」は、2016年から3年間かけたプロジェクトで、彫刻やインスタレーション、フィルム作品などで構成。その個展がイェール大学美術館(2019、ニューヘイブン)で開催され、UCCA(2019、北京)、ヘイワード・ギャラリー(2020、ロンドン)へと巡回。

フィルム作品『リダウト』(2018)は、東京都写真美術館ホールで日本プレミア後、「岡山芸術交流 2019」連携プロジェクトとして岡山のシネマ・クレールで上映。

ジョナサン・べプラー

米・フィラデルフィア生まれ。バーモント州ベニントン大学に在学中の1982年より、独学で楽器の演奏を始める。

多種の楽器を操り、作曲家のルイス・カーラブロ、音楽家のビル・ディクソン、ドラマーのマイルフォード・グレイブスらを通じて音楽を磨く。

リサ・ネルソンや田中泯との協働からパフォーマンスを学び、1997年マシュー・バーニーのフィルム作品『クレマスター5』に楽曲提供。1999年『クレマスター2』と2002年『クレマスター3』でも音楽を担当している。

2003年「越後妻有 大地の芸術祭」にて「つかの間のシンフォニー:丘陵と渓谷のための聖譚曲」を発表し、CDをリリース。

6時間の映像オペラ『RIVER OF FUNDAMENT』(2014)でも、マシュー・バーニーと協働。単なる音楽担当を超え、共同名義とした。

マシュー・バーニーの最新フィルム作品『リダウト』(2018)にも音楽で参加した。

ウェブ版「美術手帖」の記事は、こちら

https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21388


ウェブ版「美術手帖」による開催延期の記事は、こちら

https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21408


「岡山芸術交流2019」連携プロジェクト

マシュー・バーニー『リダウト』特別上映のプレスリリースは、こちら:

https://bit.ly/2Qlp1aC

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