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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『MEMORIA メモリア』日本公開までの道のり


コロンビアで互いに撮影しあうふたり。

コナーはアピチャッポンの密着ドキュメンタリーを撮り、アピチャッポンはコナーを写真撮影。


アピチャッポン・ウィーラセタクン監督は、映画『MEMORIA メモリア』(原題:Memoria)の撮影前に幾度かコロンビア国内を旅している。南米のコロンビアでロケ撮影をしよう。脚本の前から、そう決めていたためである。現地で感じたことを脚本や演出に反映させようと、アピチャッポンはコロンビアを旅してまわった。


2017年コロンビアの旅には、コナー・ジェサップが合流している。コナーはカナダの俳優で、アピチャッポンの友人でもある。2016年には福岡市での映像制作ワークショップ「T.A.P(天神アピチャッポン プロジェクト)」に講師のアピチャッポンを応援すべく、コナーが駆けつけている。そんなコナーは、アピチャッポン監督の密着ドキュメンタリーを監督することになっていた。


小規模の撮影クルーをコロンビアに同伴して、コナーはアピチャッポンを撮りつづけた。旅から戻り、その素材を編集したのが、コナー・ジェサップ監督『A.W.アピチャッポンの素顔』(原題:A.W. A Portrait of Apichatpong Weerasethakul)である。同作がリリースされたのは、アピチャッポン監督が『MEMORIA メモリア』を発表する3年も前の2018年だった。


一方、アピチャッポンはコロンビアの旅でコナーを撮りつづけていた。ビーチやジャングルでコナーと戯れるように撮影し、その写真とビデオを2017年に東京・SCAI THE BATHHOUSEの個展で発表することになる。


上記の作品群を日本で発表した順に並べると、下記となる。


①アピチャッポン「Memoria(メモリア)」展(コロンビアで撮影した写真と映像を展示)

②コナー監督『A.W.アピチャッポンの素顔』(コロンビアでのアピチャッポンを描く)

③アピチャッポン監督『MEMORIA メモリア』(コロンビアで撮影)

 

①アピチャッポン・ウィーラセタクン「Memoria」展
会期:2017年7月7日(金)〜 8月4日(金)
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡

丸い穴を開けた白壁を天井から吊るして、その穴からコロンビアで撮影したビデオを覗き見る展示プランだった。実現のため、施工業者とギャラリー(画廊)の展示スタッフが力をあわせた。


白壁にあいた丸穴からコロンビアで撮影したビデオが見えている。ビーチで蟹を撮るシーンが、コナージェサップ監督『A.W.アピチャッポンの素顔』(2018)に映っている。


一般的にビデオ映像は暗室でみせる傾向が強い。アピチャッポンはSCAI THE BATHHOUSEの自然光を活かして、白を基調とした展示を試みた。


この個展で発表したシリーズで、アピチャッポンは丸を多用。写真作品にも丸が登場する。


アピチャッポンと仲良しの俳優、西島秀俊さんが個展オープニングにお花を届けてくれた。


アピチャッポン・ウィーラセタクン「Memoria」展
会期:2017年7月7日(金)〜 8月4日(金)
会場:SCAI THE BATHHOUSE

ウェブ版「美術手帖」2017年6月12日の紹介記事
「アピチャッポン・ウィーラセタクンの新展開。南米で撮影の新作を発表」
 

②-A『トロピカル・マラディ』シナリオ本発刊記念 
アピチャッポン・ウィーラセタクン幻の映画上映
会期:2019年7月6日(土)〜7月7日(日)
会場:東京都写真美術館ホール
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内

まったく日本語ができないウクライナのデザイナーに、東京上映のポスターを依頼。トモ・スズキ・ジャパンによるアートディレクションの通りに仕上げてくれた。


©Courtesy of Kick the Machine Films


この年、アピチャッポン監督『トロピカル・マラディ』(2006)のシナリオ本をタイで出版。先行予約のお客様には、アピチャッポン監督のサイン入り版を発送している。発刊記念の上映会が『A.W.アピチャッポンの素顔』の日本プレミアとなった。



映画『MEMORIA メモリア』の構想を練るため、ロケ地となるコロンビアを旅したアピチャッポン。2017年の旅に同行したのが、俳優のコナー・ジェサップ。


現地でカジュアルな会話からアピチャッポンの次作となる『MEMORIA メモリア』(2021)のネタを引き出したコナーはコナーは、2018年に密着ドキュメンタリー『A.W.アピチャッポンの素顔』(原題:A.W. A Portrait of Apichatpong Weerasethakul)を発表した。


完成後、そのドキュメンタリーは、Criterion Channelで配信され、トモ・スズキ・ジャパンが日本語字幕を付けて、2018年に東京都写真美術館ホールで世界初のスクリーン上映をしたのだった。


コナー監督『A.W.アピチャッポンの素顔』は、アピチャッポン監督『トロピカル・マラディ』(2004)との併映。


『トロピカル・マラディ』シナリオ本発刊記念
アピチャッポン・ウィーラセタクン幻の映画上映
会期:2019年7月6日(土)〜7月7日(日)
会場:東京都写真美術館ホール
 

②-B『トロピカル・マラディ』シナリオ本輸入記念 
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 2+1
会期:2019年11月3日(日)〜11月4日(月・祝)
会場:東京都写真美術館ホール
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内

フリーランスの日本人デザイナーが東京上映のポスターを担当。トモ・スズキ・ジャパンによるアートディレクションを工夫して仕上げてくれた。


実質的には、コナー監督『A.W.アピチャッポンの素顔』のアンコール上映。アピチャッポン監督『ブリスフリー・ユアーズ』(2002)と『トロピカル・マラディ』(2004)との併映だった。


東京都写真美術館ホール入口脇のモニターで『A.W.アピチャッポンの素顔』の予告編をループ放映。この画面に映るのは、監督をつとめたコナー自身だ。


このシーンは、アピチャッポンがコロンビアで撮影した写真作品である。写真の実物は、①アピチャッポン・ウィーラセタクン「Memoria」展(会場:SCAI THE BATHHOUSE)で展示されていた。


社会学者の宮台真司さんを招き『トロピカル・マラディ』終映後にトークも開催した。


『トロピカル・マラディ』シナリオ本輸入記念
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 2+1
会期:2019年11月3日(日)〜11月4日(月・祝)
会場:東京都写真美術館ホール
 

②-Cアピチャッポン・ウィーラセタクン監督『MEMORIA メモリア』公開記念
『A.W.アピチャッポンの素顔』
会期:2022年3月15日(火)〜3月21日(月・祝)
会場:東京都写真美術館ホール
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内

トモ・スズキ・ジャパンの元アートディレクターで、フリーランスとなった日本人が3度目の上映ポスターを担当。これまでと同じ素材ながら、まったく違うテイストに仕上げてくれた。


『A.W.アピチャッポンの素顔』は、異例の1日5回転。アピチャッポン監督『MEMORIA メモリア』ロードショー公開の時期にあわせたのは、同作に至るアピチャッポン監督の思考過程をこのドキュメンタリーで紹介したかったため。


アピチャッポン監督を招き、非建築家・美術家・ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんと終映後にカジュアルトークを開催。まだコロナ感染予防の時期で、ステージにアクリル板を立てトークを行った。


トーク終了後はフォトセッションの時間を設けた。観客は自分の席からステージのゲストを撮影し、おのおのSNSにアップしてO.Kという企画。


アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『MEMORIA メモリア』公開記念
『A.W.アピチャッポンの素顔』
会期:2022年3月15日(火)〜3月21日(月・祝)
会場:東京都写真美術館ホール
 

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『MEMORIA メモリア』ロードショー

2022年3月4日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開!


配給:ファインフィルムズ

写真提供:ファインフィルムズ



多摩美術大学 大学院美術研究科の特任教授として「エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)」のために来日したアピチャッポン監督。トモ・スズキ・ジャパンのアレンジで、ファインフィルムズがヒューマントラストシネマ有楽町における上映後トークを実現させた。


アピチャッポン監督は英語でなく、タイ語で話した。タイ語の通訳をつとめたのは、アピチャッポン監督作の日本語字幕を監修したこともあるタイ語翻訳・通訳者・タイ文学研究者の福冨渉さん。


舞台挨拶の後はフォトセッション。観客は自分の席からステージのゲストを撮影し、おのおのSNSにアップしてO.Kというもの。


『MEMORIA メモリア』(英題:Memoria)

撮影:サヨムプー・ムックディプローム

編集:リー・チャータメーティクン


出演:ティルダ・スウィントン、エルキン・ディアス、ジャンヌ・バリバール、ダニエル・ヒメネス・カチョ


配給:ファインフィルムズ

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