トモ・スズキ・ジャパン有限会社 沿革

2006年

鈴木朋幸(英語の呼び名:トモ・スズキ)が、トモ・スズキ・ジャパン有限会社を設立


社長1名だけのマイクロ法人で、本店を東京都渋谷区で登記。当時の会社法には資本金1円で株式会社を設立できる特例があったが、それは使わず、資本金300万円の有限会社とした。


エンブレムとロゴは、佐藤寛之がデザイン。



1996年より2002年まで、鈴木朋幸は水戸芸術館に勤務した。シャロン・ロックハート、ビル・ビオラ、マシュー・バーニーなどのアーティストによる映像作品、及びアピチャッポン・ウィーラセタクン、石井聰亙(現在は石井岳龍)、園子温らの映画監督による短編映画を劇場のスクリーン上映する企画を立案・実現している。


水戸芸術館を退職後の4年間、鈴木朋幸はフリーランスとして働いた。アーティストやインディーズ監督と協働し、アート映画の企画、製作、上映を業務としている。


2002年マシュー・バーニーが、3時間を超えるフィルム作品『クレマスター3』を発表。それにより、『クレマスター』サイクル(1994-2002)の全5部作が完結した。


同シリーズは、5本すべてが出揃うまで1都市2作品までの上映に限られていたが、鈴木朋幸は清水敏男事務所(現在はTOSHIO SHIMIZU ART OFFICE)と協働で全5作品を一挙公開した。その企画名をアーティスト本人が命名し、マシュー・バーニー『クレマスター』フィルム・サイクルとしている。2002年の東京・渋谷シネマライズ(当時)を皮切りに、2003年までに大阪、高知、京都、名古屋、広島と全国6都市へ巡回した。


なお、2002年の渋谷・シネマライズにおける『クレマスター』サイクル全5部作ノンストップ一挙上映は、商業劇場としては世界初の快挙。5作品あわせて1日7時間の連続上映を7日間つづけた上映企画に、作家本人もすこぶる感激していた。


マシュー・バーニー『クレマスター』フィルム・サイクルの宣伝ビジュアルは、FiSH DESIGNが担当。

トモ・スズキ・ジャパン有限会社は、鈴木朋幸がフリーランス時代に手がけた仕事を受け継ぎ、アート映画を専門にした。アーティストやインディーズ監督の発表の機会づくりを会社の主たる事業としている。


同様に鈴木朋幸が個人で行ってきた業務を引き継ぎ、映画監督・美術家、アピチャッポン・ウィーラセタクンのエージェント業を法人としても継続している。


2008年

アピチャッポン・ウィーラセタクンによる日本初の個展「Replicas」を製作。

アピチャッポンの美術作品を日本で扱うギャラリーを東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEと決め、同画廊との協力体制を築く。


同展で発表したアピチャッポンの4面マルチ映像インスタレーション《Unknown Forces》(2007)にて、高橋裕行、真鍋大度、石橋基(真鍋大度と石橋基は、現ライゾマティクス)と協働。鑑賞者が画面に近づくと音量が増し、遠ざかると音が小さくなるワイヤレスヘッドホンを採用した。


同作は米・カーネギー・インターナショナルにも展示し、「ファイン・プライズ」(若手の最高賞)に輝いている。

2010年

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『ブンミおじさんの森』が「カンヌ映画祭」パルムドール(最高賞)受賞。


トモ・スズキ・ジャパンが製作協力した同作は、「プリミティブ」プロジェクトの映画部分となる。「プリミティブ」プロジェクトとは、美術作品(マルチ・チャンネル映像インスタレーション)と短編映画、アート本を同じ枠組みで製作するもので、美術部分では同2010年にアピチャッポンが韓国のアジア・アート・アワードを受賞している。

2011年

アピチャッポン監督『ブンミおじさんの森』(2010)全国ロードショーに協力。


アピチャッポン映画の日本上映は過去にもあったが、配給権を得た商業公開としては『ブンミおじさんの森』が日本の映画史上で初めて。提供:シネマライズ 配給:ムヴィオラ 協力:SCAI THE BATHHOUSE、トモ・スズキ・ジャパンという体制。


映画『ブンミおじさんの森』の宣伝ビジュアルは、thumb Mが担当。

2016年

アピチャッポン新作映像インスタレーション《Invisibility》共同製作


さいたまトリエンナーレ2016」(ディレクター:芹沢高志)から委嘱された同作は、製作の段階で二転三転。アピチャッポン映画の音響担当が、さいたま市をバンコクから事前訪問して各所のサウンドを収録して、タイに持ち帰った。その音を聞いたアピチャッポンが映像を発想する手順だったが、完成までに変更を幾度も繰り返す。結局、スクリーンに映る影を撮影した白黒の2面シンクロに帰結。


同トリエンナーレで初出の際、プロジェクターのレンズ前にシャッターを設置する案が急浮上。壁面に投影するプロジェクターの光源を物理的にを遮るプログラムを設定した。結果、鑑賞者がシャッターで定期的に区切られた、断片的な映像を観る作品となる。


同作はキュレーターのクリッティヤー・カーウィーウォン(現在はジム・トンプソン美術館館長)が企画した「Apichatpong Weerasethakul: The Serenity of Madness」展に組み込まれ、世界7ヶ国へ巡回した。その後、英・アルテスムンディのノミネート展でも展示され、2019年に同賞をアピチャッポンが受賞している。

アピチャッポンの映像インスタレーション美術館展をコーディネート。


2画面シンクロの映像インスタレーション《FAITH》(2006)を青森県立美術館 開館10周年記念展で発表。


半年後には、映像インスタレーション《ナブアの亡霊》(2009)を横浜美術館のエントランスホールに設置の上、新作《炎(扇風機)》(2016)を宙に浮くように展示した。それらの2つの展覧会への出品で、トモ・スズキ・ジャパンが制作進行をつとめた。

アピチャッポン・ウィーラセタクン《炎(扇風機)》(2016)横浜美術館での展示風景


東京都写真美術館 「アピチャッポン・ウィーラセタクン:亡霊たち」コーディネート


東京都写真美術館 総合開館20周年記念として企画されたアピチャッポンの個展をコーディネート。同展のプログラムとして、開催された上映会「アピチャッポン本人が選ぶ短編集」の製作もトモ・スズキ・ジャパンが担当した。その機会にアピチャッポン監督による短編作品すべてに日本語字幕を付けている。

2017年

アピチャッポン・ウィーラセタクンによる初の舞台作品「フィーバー・ルーム」日本初演に協力


「TPAM 2017」のプログラムとしてKAAT 神奈川芸術劇場で公演すると、連日満席。当日券やキャンセル券を求める列が7時間待ちの日もあった。


その上映パフォーマンス「フィーバー・ルーム」は、2019年に国際交流基金アジアセンター「響き合うアジア」のプログラムで東京芸術劇場2階プレイハイスで再演。トモ・スズキ・ジャパンはスーパーバイザーをつとめている。

Courtesy of Kick the Machine Films


マシュー・バーニー&ジョナサン・べプラー『リバー・オブ・ファンダメント』特別先行上映。


マシュー・バーニーの『クレマスター』サイクルで音楽を担当したのが、ジョナサン・べプラーだった。ふたたび、ふたりが共同製作したのが、この6時間におよぶ映像オペラになる。


独・バイエルン国立歌劇場で上映してから、プロセニアム型劇場での公開を希望しつづけた作家とトモ・スズキ・ジャパンが交渉を重ね、プロセニアム・アーチこそないものの、緞帳を仮設した空間で、約50台のスピーカーを配置する「爆音」での上映が許可された。


山口情報芸術センター(YCAM)で開催する「YCAM爆音映画祭2017」(総合プロデュース:樋口泰人)のオープニング作品として日本初公開。地元の蔵元、旭酒造の協賛を得て「獺祭 純米大吟醸 スパークリング45」を無料ウェルカムドリンクとして観客に提供した。


マシュー・バーニー『クレマスター』サイクル全5部作を配給


2002年に商業映画館としては世界で初めて全5作ノンストップ上映を創業前の社長が個人で企画・製作して以来、日本での上映にはすべて関与してきた合計7時間の作品シリーズ。


東京都写真美術館ホール、金沢21世紀美術館、青森県立美術館、同志社大学 寒梅館ハーディーホール、山口情報芸術センター(YCAM)と全国5会場で再映。1日7時間をかけてシリーズ全5作品を一挙公開する会場と5作を個別に上映する会場に分けた結果、ノンストップ連続上映のが人気だった。

Matthew Barney, Cremaster3, 2002. Production still.

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels. Photo: Chris Winget


マシュー・バーニー『拘束のドローイング9』配給。


マシュー・バーニーが日本でロケ撮影を行い、ビョークと共演したのが、このフィルム作品。2005年に金沢21世紀美術館を皮切りにソウルとサンフランシスコへ巡回した個展「マシュー・バーニー:拘束のドローイング展」初日に世界初公開して、同年の「ベネチア映画祭」にも正式招待された。


同作のプレミア公開から10年以上を経て、再び金沢21世紀美術館で上映。東京都写真美術館ホールを含め、全国5会場で再映した。

2018 年

上映ライブ「アリ・マルコポロス x ジェイソン・モラン」製作(招聘:カラ・ウォーカー)。


写真家のアリ・マルコポロスが定点撮影したサイレント映画『ザ・パーク』を東京・sonoriumで日本初公開。その上映にあわせてピアニストのジェイソン・モランが即興でスタインウェイを演奏。演奏をライブ録音して、後日、無音だった映画に加えた。結果、サウンド付の映画『ザ・パーク』が完成して、翌2019年に東京・表参道のギャラリー、ファーガス・マカフリーで初披露となった。

2019年

アピチャッポン・ウィーラセタクンの「ベネチア・ビエンナーレ」出品協力。


森美術館で初出した映像インスタレーション(共作:久門剛史)のほか、旧作の写真がベネチア・ビエンナーレのディレクターが企画した展覧会に選出された。その出品・展示にまつわる作業を代行。

上映会「アピチャッポン・ウィーラセタクン幻の映画上映」企画・製作


アピチャッポン監督『トロピカル・マラディ』(2004)のシナリオが、タイで書籍化された。その出版記念として、同作と前作『ブリスフリー・ユアーズ』(2002)を東京都写真美術館ホールで上映。


新作映画のプリプロダクションで、南米のコロンビアに滞在したアピチャッポン監督にカナダの俳優・映画監督のコナー・ジェサップが密着したドキュメンタリー『A.W. アピチャッポンの素顔』も日本初公開。大入りにつき、同様の上映会を4ヶ月後に追加開催した。

上映会「アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 2+1」企画・製作


前回の人気を受けたアンコール企画。アピチャッポン監督の2作品に加え、アピチャッポンに密着したドキュメンタリー映画をプログラム上映した。社会学者の宮台真司をゲストに迎え、上映後トークも開催。


アピチャッポン監督『トロピカル・マラディ』のシナリオ本がタイで発刊されたが、本国で予約が殺到し、どこの国でも輸出分が確保できずにいた。そんな中、世界に先駆けて、まず日本にトモ・スズキ・ジャパンが輸入。その輸入本を東京都写真美術館ミュージアムショップ、NADiff Baitenで販売開始するタイミングで、上映会を催した。記念すべき、文化の日の出来事となった。

2019年

マシュー・バーニー&ジョナサン・べプラー『リバー・オブ・ファンダメント』重要文化財4K上映。


前々年、50台ものスピーカーを使う「YCAM 爆音映画祭2017」のオープニング作品として、特別先行上映したのが、この映像オペラ。プロセニアム型の劇場と求めた作家の望みを叶えるべく、開館当時はオペラハウスとしても利用された国指定の重要文化財である大阪市中央公会堂(実施設計:辰野金吾、片岡安)で上映。このために、幅10メートルの上映用スクリーンを新調し、4KのDCPプロジェクターと50台を超えるスピーカーを持ち込み、トモ・スズキ・ジャパンが主催した。

マシュー・バーニーのフィルム作品『リダウト』を配給・上映。


米・イェール大学美術館での個展「マシュー・バーニー:リダウト」初日に、同館オーディトリアムで世界初披露したのが、このフィルム作品。現地で作家と合意したトモ・スズキ・ジャパンが、同年のハロウィン夜に東京都写真美術館ホールで日本プレミア公開。たちまちチケット完売の満席につき、翌日にアンコール上映を追加。


さらに、バーニーが参加中の「岡山芸術交流2019」(アーティスティックディレクター:ピエール・ユイグ)関連で、岡山のシネマ・クレール丸の内でも1日限りの上映会を行った。


翌2020年、東京都写真美術館ホールを皮切りに、大阪のシネ・ヌーヴォ、京都の出町座でもロードショー公開。2月末には東京に戻り、バーニーの旧作も含めた拡大上映を計画してたところ、新型コロナウイルス感染症の拡大により、会場となる東京都写真美術館が臨時休館。特集上映も一旦中止(延期)とした。

上映ライブ「石川直樹 x スガダイロー」共催。


写真家、石川直樹が標高6,000メートルを超える山で撮影したビデオ2本をスクリーンで公開。本来はサウンド付きのビデオだが、音を消して上映した。大きなスクリーンに映る映像にあわせて、ピアニストのスガダイローが即興でグランドピアノを演奏。同志社大学 寒梅館ハーディーホール史上初のイベントとなった。

何翔宇(へ・シャンユ)初監督作『ザ・スイム』配給


へ・シャンユの故郷は北朝鮮との国境を川で隔てる中国の小さな村。そこには、川を泳いで脱北者が来るという。その関係者の取材したドキュメンタリーにして、詩的な映像でつづる故郷のポートレイト。作家自身が中国側から北朝鮮を目指して川を泳ぐパフォーマンスの記録でもあるのが、この映画。


N.Yのグッゲンハイム美術館で世界初公開後、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムでレイトショー公開。商業劇場で2週間も帯の上映は世界初の珍事となった。作家の友人でもあり、仲間でもある中国出身のアーティスト、艾未未(アイウェイウェイ)が監督したドキュメンタリーも同じ映画館で公開した事実をトモ・スズキ・ジャパンより聞いたへ・シャンユは、感動していた。

2020年

トモ・スズキ・ジャパン有限会社のエンブレムとロゴを改正。


創業時のエンブレムを時計回りに30度回転させ、着実な進展を表現したデザイン。エンブレムとロゴの両方をブルー(CMYKのシアン100%)に変更して、淀みなく無限に広がる青空を表した。


デザインは、創業時と同じく佐藤寛之が担当。


YouTubeチャンネルで動画シリーズ公開。


マシュー・バーニーの特集上映会『リダウト』プラスが、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため一旦中止(延期)となった。バーニーによる2005年のフィルム作品『拘束のドローイング9』で製作スタッフをつとめた日本人によるゲスト・トークも休止。


上映会を再開するまでの能動的な取り組みとして、ゲストとの無観客トークを開催した。動画は、ライブとアーカイブで配信。また、トモ・スズキ・ジャパン公式YouTubeチャンネルのコンテンツを充実させるべく、番組製作をスタートさせた。


令和2年度 文化庁「文化芸術活動の継続支援事業」

2021年

アピチャッポンによる初のパブリックアート《憧れの地》受託製作。


札幌文化芸術交流センター(SCARTS)による「西二丁目地下歩道映像制作プロジェクト」にアピチャッポンが選ばれた。地下通路の壁面にプロジェクター4台を使い投影する映像を新たに創造する事業になる。


作家と協議の上、全体で3つの画面として、画面それぞれがブラインドのように上下する構造とした。

作品の内容は、札幌へのビデオレター。詩的な日本語をテキスト表示するサイレント映像とした。


遠藤麻衣子《Electric Shop No.1》共同製作。


映画監督、遠藤麻衣子による初のアーと作品を製作総指揮。家電量販店のTVコーナーで見かける商品の見本映像(デモ映像)を自分なりの解釈で撮るプロジェクト。そのスケッチと位置づける映像インスタレーション《Electric Shop No.1》(2021)をTakuro Someya Contemporary Artでのグループ展「ジギタリス あるいは1人称のカメラ|石原海、遠藤麻衣子、長谷川億名、細倉真弓」(企画:細倉真弓)で展示。


撮影は、植田利久(慶応義塾大学 名誉教授、帝京大学 教授)やIHI技術開発本部 基盤技術研究所の協力のもと、Phantom FLEXを使用して行った。


【注釈】以下の表記で統一しています。

『 』は映画、「 」は映画祭や展覧会、《 》は美術作品

製作は委託側:企画の発展、資金調達、全体の管理。主にデスクワーク。

制作は受託側:企画の実現、予算管理、創作を進行。主に現場。