top of page

マシュー・バーニー 『クレマスター4』(1994)

米国の美術家、マシュー・バーニー

伝説的フィルム作品『クレマスター』サイクル全5部作の中で、唯一 公道で二輪車を走らせたスピード感ある短編。

CREMASTER 4, 1994 Photo Michael James O’Brien © Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels


マシュー・バーニー『クレマスター』シリーズ5部作で最も北で撮影!ライダーの聖地、マン島を舞台にイニシエーションを描くシリーズ最初の短編フィルム

『クレマスター4』

1994年/アメリカ/カラー/35mm/42分16秒/1:1.37/ドルビーSR

【スタッフ】

脚本・監督:マシュー・バーニー

製作: ア―トエンジェル、カルティエ財団、バーバラ・グラッドストーン

制作: マシュー・バーニー、ジェームズ・リングウッド(アートエンジェル)

撮影: ピーター・ストライトマン

音響: スピン・サイクル・ポスト、サウンド・ワン

CG : セレフェックス

スチール:マイケル・ジェームズ・オブライアン

特殊効果:ゲイブ・バルタロス(アトランティック・ウエスト・エフェクト)

レース指導:ハリエット・ミルマン・リード

タップダンス振付:ジェニー・ヒル

衣装デザイン:マイケル・ヴォイスキー

衣装:マノス・ホープス(未熟なラクトンのみ)、マンクス・レザー(サイドカー・チームのみ)、マイケル・ヴォイスキー(妖精のみ)、パトリック・コックス(靴のみ)

【キャスト】

ロフタン子羊: マシュー・バーニー

上昇チーム : チーム・モリヌー(デイブ&グラハム・モリヌー)

下降チーム : チーム・シノット(スティーブ&カール・シノット)

ロフタン妖精: シャロン・マーベル

上昇する妖精: コレット・ギモンド

下降する妖精: クリスタ・バウチ


マシュー・バーニー『クレマスター4』

【あらすじ】

アイリッシュ海の中央にあるマン島。グレートブリテン島とアイルランド島に囲まれ、英国の君主が領土を世襲する小さな島だ。

一年に1度、そこで「マン島TTレース」と呼ばれるオートバイの公道レースが行われる。そのため、ライダーの聖地とも崇められている。

島内にあり、海に突き出した桟橋は「クーイン―ズ・ピア」と呼ばれていた。その先端にある白い家には、白いスーツに身を包んだロフタン子羊。

鏡を覗き込み、入念に赤毛を整える彼の頭皮は大きく凹んでいた。大人の証である角の生え際だが、まだ角は生えていない。

ロフタン子羊は、まだ成人前なのだ。一人前になるには、通過儀礼を体験する必要がある。

路上では、サイドカー2台がスタートの瞬間を待っていた。イエローのバイクは「上昇チーム」で、ブルーは「下降チーム」という。爆音が響き、エンジンが高鳴り、発車!しかし、サイドカーはそれぞれ逆の方向に走り出してしまう。

桟橋上の室内では、ロフタン子羊のタップダンスが始まった。ミラーに向かって踊るロフタン子羊に妖精たちが近づく。そして、パンツのポケットに半透明な玉を忍び込ませるのだった。すると、なぜかストリートを疾走するライダーのレーシング・ジャケットから、半透明な玉が飛び出してくる。

踊りつづけるロフタン子羊。足下には小さな穴が空き、徐々にその穴が広がり、海面が見えてきた。

やがて、ロフタン子羊は穴に飲み込まれ、海に落下してしまう。

相変わらず、サイドカーは爆走。崖の上に広がる草原では、3人の妖精がイエローの敷物の上でくつろぎ、彼の到着を待っていた。

一方、ロフタン子羊は、海中で別の穴に吸い込まれてしまう。そこは無数の白い玉が降り注ぎ、白いネバネバがまとわりつく狭小空間で、進めば進むほど狭くなる洞窟みたいなトンネルだった。

もがき苦しむロフタン子羊。尖ったものに胸を突き刺され、ネバネバしたものが口に入り込む。

必死に耐えて出口を探すと、ようやく地面の下らしき場所まで行き着いた。

その表面を頭で突っつき地上に顔を出すと、そこには角をリボンで飾った成人のロフタン羊が立ちはだかっていた。

牧歌的な光景とスピーディーなシーンを交互に織り交ぜ、イニシエーションを描いた『クレマスター』シリーズ最初のショートフィルム。

CREMASTER 4, 1994 Photo Michael James O’Brien © Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels



ロフタン

マン島原産の羊。マンクス・ロフタン種のこと。小型で顔と脚は無毛。こげ茶色をしている。

角は4本が多いが、2本や6本の角が生えた個体も存在する。

『クレマスター4』(1994)発表以来、長らく「ラクトン」と誤訳されてきた。中には、ヒツジではなく、ヤギと和訳されたものも散見。この機に、2017年時点で正確とされるカタカナ表記の「ロフタン」に修正する。



動画出典:WPW 230 - Christa Bauch (Official Video Preview)

女性 ボディービルダー

妖精を演じる3名は、それぞれキャリアが長いボディービルダーである。

中でも「下降する妖精」を演じたドイツ出身のクリスタ・バウチは、1980年代後半に西欧のボディービル選手権で好成績を収めている。

1988年のWABBA「ヨーロッパ・チャンピオンシップ」では優勝に輝いた。

画像出典:http://cremaster.net/

「フィールド」エンブレム

1987年「拘束のドローイング1」で初登場以来、マシュー・バーニーが頻繁に使用するシンボル。もちろん『クレマスター』シリーズでも多用。

楕円に長方形が重なる形で、楕円の部分が身体を表し、中央に重なる長方形が負荷を意味している。


『クレマスター1』あらすじは、こちら

『クレマスター2』あらすじは、こちら

『クレマスター3』あらすじは、こちら

『クレマスター5』あらすじは、こちら


2020年2月29日(土)〜3月15日(日)、東京都写真美術館ホールで予定したマシュー・バーニー『クレマスター』サイクル全5部作(1994-2002)の上映は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2月26日(水)の首相要請を受け、開催を延期させて頂きました。


上映の日時が再調整でき次第、あらためて本サイトにてお知らせします。


ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

2020年2月26日(水)

トモ・スズキ・ジャパン有限会社 社長 鈴木朋幸

​​


bottom of page