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マシュー・バーニー 『クレマスター5』(1997)

米国の美術家、マシュー・バーニー

伝説的フィルム作品『クレマスター』サイクル全5部作の中で、唯一 ハリウッド女優が出演するオペラ映画

CREMASTER 5, 1997 Photo Michael James O’Brien © Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels


マシュー・バーニー『クレマスター』シリーズ5部作で最も東で撮影!ハリー・フーディーニの生まれ故郷、ブダペストで展開する悲しい恋の物語


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『クレマスター5』

1997年/アメリカ/カラー/35mm/54分30秒/1:1.85/ドルビーSR 【スタッフ】 脚本・監督:マシュー・バーニー 制作: バーバラ・グラッドストーン、マシュー・バーニー 撮影: ピーター・ストライトマン 音楽: ジョナサン・ベプラー 美術: ロバート・ウォーガン 衣装: リンダ・ラベル、カレン・ヤング ヘア: アブラム・フィンケルステイン(ヴィダルサスーン) メイク :レジーナ・ハリス 彫刻制作:ポール・ピゾーニ 特殊効果:ゲイブ・バルタロス(アトランティック・ウエスト・エフェクト) スチール:マイケル・ジェームズ・オブライアン ジャコバン鳩調教:メアリー・ファーレイ 3Dアニメーション:ジョン・バウマン、ディーン・デ・カルロ、ヨーステン・キュイペルス、ウィリアム・イェリントン 【キャスト】 鎖の女王: ウルスラ・アンドレス マジシャン、ディーヴァ、巨人:マシュー・バーニー(1人3役) 女王の声 :エイドリアン・クセンジェリー 女王の従者:ジョアンヌ&スーザン・ラー 指揮:ガルガリー・ガボジ 演奏:ブダペスト交響楽団 妖精:ジョアンヌ&スーザン・ラー、エイミー・チャン、メイ・チャオ・チウ、ミッチェル・イングカベット、ヨーコ・クロイワ、キム・ニアム


マシュー・バーニー『クレマスター5』

【あらすじ】

ハンガリーの首都、ブダペスト。「脱出の名人」と異名を取ったハリー・フーディーニの故郷である。 夜の街にマジシャンの姿が浮かび上がった。彼は馬に乗り、黒いマントをなびかせ、ゆっくりと鎖橋に向かう。 一方、ネオ・ルネッサンス様式の絢爛豪華なオペラ座には「鎖の女王」。彼女は黒のドレスと黒のベールをまとい、階段を登ってゆく。赤い服の従者ふたりに付き添われて…。 女王はオペラ座のボックス席に落ち着いた。すると、ブダペスト交響楽団の演奏が始まる。そして、「鎖の女王」はマジシャンへの恋心を歌い出すのであった。 女王のオペラ・アリアが響く中、劇場内にピンクの衣装を身に着けたディーヴァが現れた。ラ テン語で「神々しい」という意味の男性型だが、俗に歌姫を指す存在である。 デーヴァは舞台の額縁を登り始める。プロセニアム・アーチと呼ばれ、ステージと客席を区分けする部分。そこを自力で登るディーヴァ。ユリの花と蔦で飾られたアーチを移動している。 突然、ジャコバン鳩が飛び立った。女王の敷物にリボンで結び付けられた純白のジャコバン鳩。女王の足下に広がる別世界へと案内するのだった。 両性具有の妖精が戯れる幻想的な世界。真珠が浮かぶハンガリー式の温泉プールがある。そこで妖精たちが巨人の下半身にリボンを結んでいる。リボンは白いジャコバン鳩につながっていた。 その頃、マジシャンが鎖橋に到着。橋上で黒いマントを脱ぎ始める。 「鎖の女王」と雪の中、熱く抱擁する場面を回想している。白く大きな鎖で手足を拘束されるマジシャン。そのまま、ドナウ川に身を投げてしまう。 川に身を投じ、水の中でゆらぐマジシャン。オペラ座で転倒する女王。最後にカタストロフが訪れる! マシュー・バーニー作品に幾度となく登場するハリー・フーディーニの生まれ故郷を舞台に、名女優と悲しい恋物語を綴ったオペラ映画風のシリーズ最終章。

CREMASTER 5, 1997 Photo Michael James O’Brien

© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels




ハリー・フーディーニ(1874 - 1926)

20世紀初頭、アメリカで爆発的人気を誇ったマジシャン。

ハンガリー・ブダペスト生まれ。得意としたのは、脱出術とメタモルフォーゼ。脱出術とは、鎖やロープで身体を縛り、そこから抜け出すマジック。メタモルフォーゼとは、箱の中の男が女にすり替わるようなトリック。

戦後で言うとデヴィッド・カッパーフィールドで、日本で言えば引田天功のような存在とも例えられる。

ハリー・フーディーニ役は、『クレマスター2』(1999)で小説家のノーマン・メイラーが、『クレマスター5』(1995)でマシュー・バーニーが、それぞれ演じている。

ウルスラ・アンドレス(1936 - )

スイス・ベルン生まれの女優。16歳の時、美術留学生としてパリに渡り、翌年にローマで映画人にスカウトされた。映画デビュー後、マーロン・ブランドの勧めでハリウッドへ。1957年には俳優のジョン・デレクと結婚。

グラマラスなスタイルと独特の美貌をかわれ、映画『007』の初代ボンドガールに抜擢されている。

主な出演作は『007 ドクター・ノオ』(1962)、『007 カジノ・ロワイヤル』(1967)、『レッドサン』(1971)、『タイタンの戦い』(1981)、『チャイナタウン殺人事件』(1989)。

​『クレマスター5』(1997)では、黒い衣装に身を包む「鎖の女王」役を熱演。


ブダペスト

ハンガリーの首都。「脱出の名人」と呼ばれたハリー・フーディーニの生まれ故郷。ドナウ川にかかるセーチェーニ鎖橋は観光名所。全長380メートルの吊り橋で、ドナウ川の沿岸で最初に完成した恒久的な橋とされている。

『クレマスター5』(1997)でマシュー・バーニー扮するマジシャンが飛び込むのが、この鎖橋である。


ゲッレールト温泉

ハンガリー・ブダペストにある温泉。ドナウ川の右岸で自由橋のたもとに位置する。ゲッレールトの丘の麓に建つホテルには、アールデコ調の装飾とガラス天井に覆われた室内プールがあり、ブダペストのシンボル的存在となっている。

ハンガリー国内には100以上の温泉ホテルが営業しているが、『クレマスター5』(1997)のロケに選ばれたのが、ゲッレールト温泉のプール。マシュー・バーニー扮する巨人が妖精たちと戯れるシーンが撮影された。

画像出典:http://cremaster.net/

「フィールド」エンブレム

1987年「拘束のドローイング1」で初登場以来、マシュー・バーニーが頻繁に使用するシンボル。もちろん『クレマスター』シリーズでも多用。

楕円に長方形が重なる形で、楕円の部分が身体を表し、中央に重なる長方形が負荷を意味している。


『クレマスター1』あらすじは、こちら

『クレマスター2』あらすじは、こちら

『クレマスター3』あらすじは、こちら

『クレマスター4』あらすじは、こちら


2020年2月29日(土)〜3月15日(日)、東京都写真美術館ホールで予定したマシュー・バーニー『クレマスター』サイクル全5部作(1994-2002)の上映は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2月26日(水)の首相要請を受け、開催を延期させて頂きました。


上映の日時が再調整でき次第、あらためて本サイトにてお知らせします。


ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

2020年2月26日(水)

トモ・スズキ・ジャパン有限会社 社長 鈴木朋幸

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